Rock

ピンク・フロイドの音楽的特徴は3人のリーダーによって生まれた

「好きなバンドを5つ上げろ。」と言われたら確実にPink Floyd(ピンク・フロイド)の名前を出します。そのくらいピンク・フロイドが好きですし、美しいロックを奏でる数少ないバンドだと思っています。

そんなピンク・フロイドは、プログレ5大バンドとも呼ばれているプログレを代表するバンドです。音楽性は、浮遊感や神秘性をまとうアート性とコンセプト力を持ち、実験的なサウンドを追求していったバンドでもあります。

ピンク・フロイドのアルバム「The Dark Side of the Moon(狂気)」は、5000万枚の売り上げを達成しています。またアメリカのビルボードチャートでは、741週チャートインを果たしていてギネス記録にもなっています。このアルバムの売り上げは、マイケル・ジャクソンの「スリラー」に次いで、世界で2番目とも言われています。

商業的にも大成功しているピンク・フロイドですが、なぜか知名度が低いですよね。。。

今回はそんなモンスターバンドであるピンク・フロイドを3期に分けて紹介します。これはリーダーごとに分けていて、リーダーごとで音楽に違いがあるのです。

シド・バレット:怠惰なサイケデリック

シド・バレット:ギター、ボーカル

ピンク・フロイド初期のリーダー。サイケデリックサウンドを基盤とした独特なサウンドで、サイケロックの中でも異様な雰囲気の音楽を作り出した。脱退後のピンク・フロイドの音楽性を大きく左右した人物。

シグマ6からピンク・フロイドへ

ピンク・フロイドは、1965年のシグマ6というバンドから始まります。大学の建築学科で知り合った6人が組んだバンドがピンク・フロイドの始まりでした。

シグマ6時代には、ピンク・フロイドの正規メンバーとなる

  • ロジャー・ウォーターズ
  • ニック・メイスン
  • リチャード・ライト

の3人がいました。シグマ6はメンバーチェンジやバンド名の変更を何度か繰り返します。

上の3人にシド・バレットが加入したことでピンク・フロイドというバンド名に改名します。このシド・バレットこそ、初期のピンク・フロイドのリーダーであり、ピンク・フロイドの知名度を上げる活躍を見せるのです。

ピンク・フロイド最初の成功

ピンク・フロイドは、ファーストアルバムを1967年にリリースしました。これが本国イギリスで6位に輝きます。デビューしたばかりのバンドとしては、成功とも言える成果を残すのです。

ファーストアルバム「The Piper at the Gates of Dawn(夜明けの口笛吹き)」は、その当時流行っていたサイケデリックサウンドです。しかしピンク・フロイドはただ流行りに乗った二番煎じバンドではないと言えるでしょう。

それはイギリスで6位という順位を獲得していること、そして他のサイケデリックバンドにはない、怠惰感と浮遊感、嘔吐直前のシラフ状態のような不思議な感覚をもたらす音だからです。

ピンク・フロイドにしか表現できないサウンドで、アート性やコンセプト性も含まれたバンドなのです。ちなみにサイケデリックとは、ドラックの気持ち良さを表現したサウンドのことを言います。

そしてファーストアルバムの楽曲のほとんどをシド・バレットが作曲しています。

まさに自身が体験するサイケデリックをそのまま音に乗せたと言えるでしょう。それがピンク・フロイドの独特なサウンドとなったことは、ほぼ間違いありません。しかしシド・バレットのドラック摂取は過剰になっていき、バンドを脱退せざるをえなくなります。

そしてシド・バレットの穴を埋めるために、ギタリストのデヴィッド・ギルモアが加入。噂では、ジェフ・ベックへオファーを出していたとか。

ロジャー・ウォーターズ:最強のコンセプト力

ロジャー・ウォーターズ:ベース

ピンク・フロイド二期目のリーダー。ピンク・フロイドの全盛期に中心メンバーとして活躍した。シド・バレットのサウンドをベースとしつつ、圧倒的なコンセプト性にアートや実験を加え、ピンク・フロイドを世界的なバンドにした人物。

アーティストとしての飛躍

シド・バレットの穴を埋めるのは非常に大変だったと思います。なぜならシド・バレットは、1枚目のアルバムの11曲中8曲を作曲していたからです。ピンク・フロイドは、シド・バレットの大きな力で知名度を獲得したバンドと言えます。

二期目のリーダーとなったロジャー・ウォーターズは、シド・バレットの怠惰感や浮遊感を残しつつ、新たな魅力を加えていきます。

そして1970年に「Atom Heart Mother(原子心母)」をリリース。23分を超えるタイトル楽曲をメインに、新たなピンク・フロイドのサウンドが形成されます。

このアルバムは全英で初の1位を獲得しました。何よりタイトル楽曲である「Atom Heart Mother」は、クラシックのようなストーリー性ある展開をした強く印象に残る作品です。

「Atom Heart Mother」の成功から、ロジャー・ウォーターズは、アルバムにコンセプトを用いた作品を作り始めます。そして1971年には「Middle(おせっかい)」をリリース。

これはシド・バレットが脱退してから初めてのバンドのみで作ったアルバムです。(今まではバンド以外の人の力を借りていました。)

「Middle」こそピンク・フロイドがアーティストとして、大きな飛躍を遂げる作品となります。特にファンからの人気が高い楽曲「Echoes」は、23分の以上の大作で、ピンク・フロイドの真髄に触れることができます。

「狂気」の誕生

シド・バレットがバンドに植えつけた怠惰感や浮遊感、ロジャー・ウォーターズがリーダーになってからの楽曲に取り入れたのはストーリー性やコンセプトでした。それが超大作といえる楽曲を生んだといえるでしょう。

そしてピンク・フロイドは、1973年「The Dark Side of The Moon(狂気)」をリリースします。これが超大作楽曲ではなく、超大作アルバムとなっています。

人間の内側に潜む狂気をコンセプトにロジャー・ウォーターズのリーダーシップが発揮されたアルバムです。全世界で5000万枚の売り上げ、アメリカのビルボードチャートには741週チャートインという伝説的な記録を樹立します。

ただアルバムを聴いてみると、「これが世界で売れまくったアルバムなの?」と思うでしょう。コンセプトに忠実なストーリーがあり、実験サウンドも好調。しかし現代アートのようなアルバムで、どこか聴きにくいです。

マイケル・ジャクソンのスリラーやクイーンのグレイテスト・ヒッツは売れまくったアルバムとして有名ですが、ピンク・フロイドの「The Dark Side of The Moon」は全く系統が違います。

代表的なアルバムでもありますが、少々聴きにくいのが難点でしょう。

そしてロジャー・ウォーターズは、この成功を機にバンドを支配するようになります。

  • 1975年「Wish You Were Here(炎)」
  • 1977年「Animals」
  • 1979年「The Wall」
  • 1983年「The Final Cut」

と立て続けにアルバムをリリースします。そしてこのアルバム全てで大成功を収めます。しかし1979の「The Wall」をリリースした時には、ロジャー・ウォーターズの独裁バンドとなっていました。

特にロジャー・ウォーターズによるリチャード・ライトの解雇は、独裁バンドであることを示しています。そしてメンバー間に亀裂が入り、ロジャー・ウォーターズはバンドから脱退するのです。

デヴィッド・ギルモア:無機質なアートサウンド

デヴィッド・ギルモア:ギター、ボーカル

ピンク・フロイド最期のリーダー。超絶なギターテクニックでバンドを支えてきた。今までのピンク・フロイドとは、かなり違った作風を打ち出し、無機質で冷たいサウンドを作る。

デヴィッド・ギルモアのソロ?

1985年にロジャー・ウォーターズがバンドから脱退します。このときのピンク・フロイドは、

  • デヴィット・ギルモア
  • ニック・メイスン

の2人だけでした。多くの人は「ピンク・フロイドは終わった。」「もう解散だろう。」と噂されるほど、存続の危機にありました。

しかし新しいリーダーであるデヴィッド・ギルモアは、ピンク・フロイドを継続すると発表します。そして1987年にリリースしたのが「A Momentary Lapse of Reason(鬱)」です。

ただこのアルバム。。。記憶にあまり残らないアルバムなのですよ。ピンク・フロイドと言われれば、ピンク・フロイドですが、今までのサウンドと全然違います。

それもそのはずです、もともとギルモアがソロで作っていた楽曲を集めたアルバムなのです。これによりニック・メイスンはドラムをほとんど叩いていません。ピンク・フロイドというか、ギルモアのソロアルバムと言っても良いでしょう。

そしてアルバムを聴いても冷たく無機質で、ギターが主役といった感じです。

冷たく無機質なサウンドで大活躍

デヴィット・ギルモアがリーダーになってからは、ピンク・フロイドの活動もほとんど行われなくなりました。ピンク・フロイドは、60年代後半から70年代の終わりまで活躍し続けたバンドです。ギルモアがリーダーのときには、大御所バンドという認識になっていました。

1987年に「A Momentary Lapse of Reason(鬱)」をリリースしたあと、1994年にアルバム「The Division Bell(対)」をリリースします。

これが世界で1000万枚を売り上げる大ヒットとなります。ピンク・フロイドは、ギルモアをリーダーとしても活躍し続けるバンドだと言えます。

そして「The Division Bell(対)」は、ギルモアらしい無機質なサウンドだけでなく、全盛期のようなサウンドも表現しています。特に女性バックボーカルなども「The Dark Side of the Moon」のときを思い起こさせます。

全盛期のサウンドを無機質感丸出しにした、新たなピンク・フロイドだと言えます。ただ「The Division Bell(対)」をリリースしてから活動をほとんどしなくなります。次のオリジナルアルバム「The Endless River(永遠)」がリリースされたのは2014年です。

これはリチャード・ライトが亡くなったためにリリースされた追悼アルバムでもあります。このアルバムのリリースにあたってギルモアは、「これが最後のアルバムだ。」と述べました。

ピンク・フロイドが新たなアルバムをリリースすることはもうないでしょう。しかしロック史に永遠に残る名曲や名アルバムをたくさん作ったピンク・フロイドを、わたしは死ぬまで聴き続けると思います。